介護職の給料は今後上がる?2023年以降の処遇改善について解説

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介護職員処遇改善加算とは、介護職員の賃金向上と介護人材の確保を目的とし、2012年から各介護事業所で実施されている制度です。

しかし、介護職員処遇改善加算を受けていない介護職も多く、「いつになったら賃上げされるの?」と気になっている人もいるのが現状です。本記事では、2023年以降、介護職の給料が本当に上がるのか、介護職員処遇改善加算の実施状況について解説します。

介護職の給料を上げる「介護職員処遇改善加算」とは?


2019年から、介護職の給料を上げる「介護職員処遇改善加算」、そして2022年2月〜9月で新加算の措置が決定されました。新加算は介護職の給料について、月額平均9,000円相当をアップさせる制度です。

また、2022年10月には「介護職員等ベースアップ支援加算」の運用がスタートされました。
しかし、以下の職種は、加算制度の対象外となります。

・介護支援専門員(ケアマネジャー)

・生活相談員

・事務職員

・栄養士または管理栄養士

・看護師

加算制度の対象外となる職員に加算制度を適用すると、介護報酬の不正受給とみなされるので、注意が必要です。介護報酬の不正受給が発覚した場合、介護施設・介護事業所が罰則を受けることになります。

介護職の賃上げとは?


介護職の賃上げは、介護施設・介護事業所が判断して行うものと、行政が定めた施策によって行われるものの2つに大別されます。

介護施設・介護事業所は、行政から介護報酬を受け取り、運営しています。そのため、行政が介護報酬の値上げを行わなければ、介護施設・介護事業所は介護職の賃上げをすることが困難なのです。介護職の賃上げには、行政が深く関わっていると言えるのです。

行政が定めた介護職の賃上げに関する施策は、主に以下の3つです。

・介護職員処遇改善加算

・介護職員等特定処遇改善加算

・介護職員等ベースアップ等支援加算

これらの制度により、介護職の賃上げのための加算額が各介護施設・介護事業所に支給されます。支給された加算額を、介護施設・介護事業所が介護職の賃上げ以外の目的で使用することは禁じられています。なお、2023年時点で、3種類の処遇改善加算が実施されていますが、事務処理の負担が大きいため、今後一本化する見込みです。

賃上げと昇給の違い

「賃上げ」と「昇給」は同じと思われがちですが、それぞれ意味が異なります。

賃上げとは、介護職全員の給料がベースアップされることです。先述した「介護職員処遇改善加算」「介護職員等特定処遇改善加算」「介護職員等ベースアップ等支援加算」の制度により、介護職全員の給料がアップします。

一方で昇給とは、介護職の給料が定期的に上がることです。
4月から翌年3月末までを一年度としている介護施設・介護事業所が多いため、新年度である4月1日に介護職の給料が見直されます。昇給は介護職一人ひとりの勤務年数や職務上の昇格に応じて行われます。

2022年の介護職員処遇改善手当の支給状況


厚生労働省が公表した「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、正社員介護職の2022年の平均年収は約381万円と算出することができます。
(参考:令和4年9月平均給与額:317,540円 参考:「介護職員の平均基本給等の状況(月給・常勤の者)」https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/22/dl/r04gaiyou.pdf)

正社員介護職の平均年収には、2022年10月から施行された「介護職員等ベースアップ支援加算」の加算額が含まれています。
全産業の平均年収は約458万円のため、介護職の平均年収は高水準とは言えません。行政による賃上げが行われても、介護職の平均年収は、全産業の平均年収額を下回っているのが現状です。

介護職の給料はどのくらい上がったのか


介護職の賃上げ施策として、介護職員処遇改善交付金や介護職員処遇改善加算、介護職員等ベースアップ支援加算など、様々な施策が実施されました。実際に、介護職の給料はどのくらい上がったのでしょうか。
ここからは、施策による介護職の賃上げ状況について解説します。

介護職の賃上げ状況


厚生労働省が公表した「介護従事者処遇状況等調査」によると、正社員介護職の給与水準は以下のように上昇しています。

年度

正社員介護職の平均給与額(月収)

2009(平成21)年 9月

257,880円

2020(令和2) 年 9月

315,850円

2021(令和3) 年 9月

323,190円


行政の賃上げ施策により、介護職の給料額は年々上がっています。2009年の給与額と2021年の給与額を比較すると、65,310円増。2020年から2021年の1年間でも、7,340円増えています。

引用:平成21年度介護従事者処遇状況等調査

   令和2年度介護従事者処遇状況等調査

   令和3年度介護従事者処遇状況等調査

介護業界が抱える課題

介護職員処遇改善加算を中心に、行われてきた介護職の賃上げ施策。介護職の給料は年々上昇傾向にあるものの、介護業界全体で抱えている課題もあります。

正社員介護職の平均年収は約381万円、全産業の平均年収は約458万円です。月収に換算すると、介護職の平均月収は全産業より約6.4万円低いという状態です。介護職員処遇改善加算や介護職員等ベースアップ支援加算などの加算を行っても、全産業の平均給与額より低い給与水準であることが課題となっています。

介護職の給料水準が低い理由には、以下の3つが挙げられます。

・介護報酬の支給に上限額があり、決められた介護報酬で介護施設・介護事業所の運営をしなければならないため

・光熱費や消耗品代、施設維持費など、介護職の給料以外にも多額の運営費がかかるため

・介護職は無資格や未経験でも働けるため、専門性の高さが評価されにくい

2023年以降も介護職の給料は上がるのか

2023年以降も、介護職の給料は上がり続けるのでしょうか。結論から言うと、2023年以降も、介護職の給料は上がり続けることが予測されています。

介護職員処遇改善加算交付金が施行された2009年は、介護職の給料が月額平均1.5万円増額しました。その後も徐々に増額していき、2023年9月時点では、介護職員処遇改善加算と介護職員等ベースアップ支援加算を合わせ、介護職の月額平均給与が増額しています。

さらに、勤続10年以上の介護福祉士保持者の人数に応じて、介護施設に介護職員等特定処遇改善加算が支給され、8万円がさらに増額されます。

処遇改善加算は国から介護施設・介護事業所に支給され、そこから介護職一人ひとりの給料に割り当てられます。支給額や加算されるタイミングは介護施設・介護事業所ごとに異なるため、実際どのくらい加算されるのか、職場への確認が必要です。

政府の方針

2023年1月26日に行われた国会の質疑応答 にて、岸田首相は「今後も介護職員の処遇改善を続ける」という旨の発言をしていました。また、2022年1月に行われた厚生労働省介護給付費分科会にて、小林委員が、「全産業の平均水準まで介護職員の処遇改善を継続的に取り組むべき」という旨の発言をしています。

介護職の処遇改善は国を挙げて取り組んでいるため、2023年以降も、介護職の賃上げ政策は続いていくと予測できます。

介護職が自分の力で給料を上げる方法

行政が実施している賃上げ政策では、介護職の技能や経験年数、保有資格によって月額9,000円〜8万円と、加算額が異なります。

また、勤め先によっては、介護職員処遇改善加算が反映されていないという場合もあります。ですので、賃上げ政策に期待を寄せるだけでなく、介護職自身の努力で給料を上げることが可能です。

ここからは、介護職が自分の力で給料を上げる方法を3つご紹介します。

介護福祉士の資格取得

介護職員初任者研修や介護福祉士実務者研修、介護福祉士など、介護の専門資格を取得することで、資格手当による昇給が期待できます。
特に、介護資格の中で唯一の国家資格である介護福祉士を取得すると、月1~1.5万円の資格手当が支給されます。

資格取得支援制度があるため、働きながら資格取得を目指せる点が最大のメリットです。

ケアマネや生活相談員へのキャリアアップ

介護職が「給料が安い」と言われている理由の1つに、給料に見合わない激務であることが挙げられます。早出や遅出、夜勤などの不規則勤務や、利用者様を抱えたり持ち上げたりする肉体労働。

介護支援専門員(ケアマネ)や生活相談員にキャリアチェンジすることで、不規則勤務や肉体労働に入ることなく、昇給が目指せます。

管理職への昇進

人手不足の介護施設・介護事業所では、介護職だけでなく、管理職も不足しています。そのため、別業種や別業界に比べると、介護職は管理職に昇進しやすいです。

管理職は介護施設・介護事業所の運営に関わる業務や事務処理などを担うため、介護職よりも高額な給料を受け取ることができます。

まとめ

介護職が自分の力で給料を上げることも可能であることを説明しました。介護職の賃上げは、2009年に創設された介護職員処遇改善交付金をはじめとし、介護職員処遇改善加算、介護職員等ベースアップ支援加算など、様々な施策が行われています。

また、岸田首相も「今後も介護職員の処遇改善を続ける」と宣言しており、2023年以降も賃上げ政策はさらに改善されていくことが予想されています。

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