介護
投稿日:2023/11/15
更新日:2024/10/08
介護サービスでの接遇とは?マナーの5原則と目標の例について解説
目次
「接遇」と聞くと、旅館や飛行機、クルーズ船、百貨店など、お客様に心を込めたおもてなしをする場面を想像する方が多いのではないでしょうか。
サービス業である介護の仕事でも、利用者様への接遇マナーが非常に重要です。本記事では、介護サービスで守るべき接遇マナーの概要や、実際に介護職が立てるべき接遇目標の例を挙げて詳しく紹介します。
介護サービスの接遇マナーとは?
介護サービスにおける接遇マナーとは、ご利用者様が抱える持病や悩み事などを理解し、適切かつ思いやりのある対応を行うことです。
接客業や販売業では、お客様に必要な商品やサービスの案内などの対応を行います。しかし、介護サービスのご利用者様は、接客業や販売業のお客様とは違い、病気や加齢、障害などのハンディキャップを持っているケースが大半です。
そのため、介護業界では、ただ単に挨拶や笑顔などの接遇マナーを心得るだけでなく、ご利用者様のお一人おひとりの状況や気持ちを理解したうえで支援とサポートをすることが求められます。
介護現場で接遇マナーが重要視される理由
介護現場では、なぜ「接遇マナー」が重要視されているのでしょうか。
介護現場で接遇マナーが重視される理由は、具体的に以下の3つです。
・ご利用者様やご家族様に信頼していただくため
・ご利用者様の尊厳を保つため
・介護サービスの質を向上させるため
それ以外にも、職場の雰囲気を良くし、スタッフが働きやすい環境を整えたり、介護職自身が接遇マナーを通じてスキルアップなど、実務の面でもさまざまなメリットがあります。
ここからは、介護現場で接遇マナーが大切なことであるといわれる理由を詳しく解説していきます。
ご利用者様様やご家族様に信頼していただくため
介護サービスを提供する上で、ご利用者様やご家族の方との信頼関係は欠かせません。
十分に信頼関係を築けていない状態で介護サービスを提供してしまうと、ご利用者様やご家族の方が不安に感じ、相談やお問い合わせを頻繁に受けたり介護拒否やクレームにつながってしまう可能性もあります。
挨拶や笑顔、丁寧な言葉遣いなどの接遇マナーを守って行動することで、ご利用者様やご家族の方との関係が築きやすくなります。
そのため、多くの方々に安全に介護サービスを提供するという点において、正しい接遇マナーを押さえて信頼関係を構築していくことは非常に大切です。
ご利用者様の尊厳を保つため
介護サービスを提供する上で、どんなご利用者様に対しても敬意・尊厳を払うことを忘れてはいけません。日本国憲法でも、「全ての国民は個人として尊重される」と定められています。
尊厳とは、人が生まれながらにして持っている権利です。
介護が必要になっても、一人の人間として尊厳を持って生活する権利があります。人生の先輩として、ご利用者様に敬意を払った対応をするには、接遇マナーが欠かせません。
介護サービスの質を向上させるため
介護職一人ひとりが接遇マナーを守ることで、丁寧かつ質の高い介護サービスが提供できます。
また、サービスを通して職場全体の雰囲気が良くなるため、ご利用者様やご家族の方にとって居心地がよく、介護職にとっても働きやすい職場環境が実現するでしょう。
職場全体で接遇マナーを心がけることで、他の介護施設・介護事業所との差別化を図ることも可能です。
丁寧で質が高い介護サービスを提供している介護施設・介護事業所は職員のモチベーションも高く、介護を必要とする方からの入居申し込みが絶えず、求人の応募者も集まりやすいと考えられます。
介護現場での接遇マナー5原則
介護現場での接遇には、「マナーの5原則」というものがあります。
マナーの5原則とは、大きなものとして「挨拶・声掛け」「言葉遣い」「表情・笑顔」「態度」「身だしなみ」の5つと言われており、これらを心がけることで、自然と接遇マナーが身につけられるものです。
ここからは、マナーの5原則について詳しく解説していきます。
挨拶・声掛け
挨拶・声掛けは、接遇マナーの基本中の基本です。
ご利用者様やご家族の方、同僚など、誰に対してもハキハキと元気よく挨拶をすることは簡単にできて、職場全体の雰囲気が良くなることに繋がるとても重要な要素です。
もちろん、挨拶・声掛けをする際は初対面の人だけでなく、毎日顔を合わせている人に対しても継続的に行うことが大切です。
言葉遣い
介護事業所では、よくご利用者様に対してため口を使っている場面をよく見かけます。しかし、サービス提供者がお客様に対してため口で接するのは印象がよくありません。
ご利用者様に馴れ馴れしい口調で話しかけることは避け、基本は敬語を使うようにしましょう。
ただ、単に堅苦しい敬語だけを使って接するのでなく、時と場合に応じて、分かりやすい言葉でかみ砕いて説明したり、難しい言葉を意味が伝わりやすくなるようにうまく伝えることもコミュニケーションにおいては大切です。
毎日ケアに携わっているからこそ、乱れてしまいがちな言葉遣い。研修会や会議などで、日頃の業務での言葉遣いを振り返って客観的に指導してもらうことも大切です。
表情・笑顔
さらに介護現場の接遇マナーで重要なのは、介護職の表情・笑顔です。
「意識して笑顔を作るのが苦手」
「無理して笑顔を作ろうとすると、引きつったようになる」
このような悩みを感じ、自然な笑顔を作るのが難しいと考える介護職も多いでしょう。
しかし、無表情や仏頂面でご利用者様に話しかけたり、介護をしようとしたりすると、どうしても介護を受ける側は不安感や恐怖心を感じてしまいます。
また、無意識にでも嫌な顔をしてしまうと、ご利用者様やその家族の方が不快に感じます。忙しい介護現場で働くとしても、常日頃、少しずつでも自分自身の表情や笑顔を意識することが大切です。
態度
接遇マナーで言う「態度」とは、相手への接し方や物の受け渡しの仕方、歩き方、姿勢などの立ち振る舞いのことです。
ご利用者様と密に接して介護サービスを提供する介護職員は、ご家族の方やその他の来訪者から、立ち振る舞いを見られています。
ご利用者様やご家族の方への物の受け渡しが雑になったり、ため息をついていかにも気だるそうな態度で仕事をする姿は、職員だけでなく施設全体の印象も悪くしてしまうので徹底した注意が必要です。
背筋をピンと伸ばして明るい印象になっているか、立ち振る舞いが誠実で信頼感があるかどうかといった基準やルールを作るのを検討してみてもいいかもしれません。
身だしなみ
接遇マナーで大事な身だしなみは、清潔感のある服装や髪形、メイクなどです。
伸びたまま放置している爪やヒゲ、整っていない髪型やきつい香水の匂いなどは、相手に不快感を与えてしまいます。
見た目はその人の第一印象やイメージに大きく影響するので、高齢者にとってもこの人なら安心して任せたいと感じていただけるよう、鏡を利用して先に確認しておいたり、職員同士でお互いに確認し合ったりしておくことで身だしなみを整えるよう気を付けましょう。
介護の仕事は、製造業や運送業のように物を扱う仕事ではありません。
人と人との関わり・見えないつながりが欠かせない仕事だからこそ、身だしなみが重要視されるのです。
介護職が立てるべき接遇目標の具体例
介護職が接遇マナーを守りながら仕事をするためには、自分自身の勤務態度を振り返り、「接遇目標」を設定することが大切です。
接遇目標では、理想とする人物想像を掲げ、どうすればその人物像に近づけるのか、達成できる目標や身に着けたいスキルに向けて段階的に設定することをオススメします。
介護職が立てるべき接遇目標は、以下の3つです。
・ご利用者様と視線を合わせるようにする
・ご利用者様の話を「傾聴・受容・共感」する
・ご利用者様やご家族様の立場で物事を考える
ここからは、接遇目標で守るべきポイント等を詳しく解説していきます。
ご利用者様と視線を合わせる
接遇マナーの初めの一歩として、ご利用者様と目線を合わせることを心がけましょう。
ご利用者様は椅子や車椅子に座っていることが多いため、入浴や排泄介助をする前の声かけ1つとっても、介護職が立ったまま声かけを行うと、見下ろしたような姿勢になってしまいます。
ただ、高齢者で認知症による抑うつ症状や精神疾患がある方の場合、人と視線を合わせることが苦痛に感じるということも知っておきましょう。
特に、入居して間がないご利用者様のことを知りたいという場合、同じ高さで視線を合わせて話すことを意識するだけで、信頼関係を築きやすくなります。
ご利用者様の話を「傾聴・受容・共感」する
ご利用者様を理解し、信頼関係を築くことを目的にした場合、傾聴・受容・共感を心がけてコミュニケーションを図ることが大切です。
一般的に、「傾聴」は、”ご利用者様の話に適度な相槌をうちながらしっかり聞くこと”を表します。
「受容」は、”ご利用者様の話を否定せず、受け入れること”を表します。
「共感」は、”ご利用者様の話と自分自身の話を重ね合わせ、「そのお気持ちすごく分かります」と親身になって話を聞くこと”です。
しかし、日々の忙しい介護現場では自分の仕事を優先してしまいがちで、ご利用者様の話を聞く時間がなかなかとれません。
1日に短い時間しか取れなかったとしても、ご利用者様の話を聞く時間をなるべく作るよう常に意識しておきましょう。
ご利用者様やご家族様の立場で物事を考える
接遇マナーで大切なのは、ご利用者様やご家族の方の立場で物事を考えることです。自分本位の姿勢では、思いやりや気遣い、おもてなしの心を持った対応ができません。
思いやり・気遣い・おもてなしの心でご利用者様やご家族の方と接するには、まずは相手の立場で物事を考える方法を身に着けることが大切です。
このような接遇スキルが身につくと、自然に相手がかけてほしい言葉やニーズに気づけるようになり、趣味やADLを把握し、お一人お一人に合ったスムーズなサービス提供の判断につながります。
ご利用者様にとって安心できる距離感を保つ
介護職員が常にそばに居ることでプレッシャーを感じたり、まるで家族のように話しかけられると本人も距離感が分からなくなり気分を害してしまう可能性もあります。
オープンスペースで共有の空間を持つグループホームやデイサービスなどと異なり、居室がある場合は特にパーソナルスペースを意識している方も多いです。
介助以外の時には、必要以上に距離を詰めるのではなく、あくまで思いやりや気付きを通してサポートをしていくということを意識してみてはいかがでしょうか。
接遇は常に磨き続ける
接遇やマナーは本来絶対的に決められたものではなく、それぞれの運営会社や事業所ごとの特性、理念や管理者の方針などによって様々で正解はありません。
また、ご利用者様によっては、普段は物静かで穏やかに見えるご利用者様に質問すると、実はコミュニケーションをとることが好きだとわかったり、お互いの会話の中で理解を深めていくことも多いのは魅力でもあります。
どんな時も相手に寄り添い、ときに振り返りを実施しながら自分なりの正解を見出して改善を繰り返すことで、接遇を磨いていっていただきたいと思います。
個人目標と合わせてより良い接遇マナーを身に着けよう
介護施設によっては、1人1人が介護スキルを磨き技術を習得できるよう個人目標を立てます。
ここでは、未経験の方から管理職の方まで、それぞれの個人目標に接遇目標をどのような立ち位置で設定するかを解説します。
未経験から数年間までの場合
よくある課題としては、介護業務とそのための考え方や知識をしっかり覚えることが目標に上げられます。
もし未経験の無資格から働くことになった場合、まずは介護業務としての目標として上記に上げた接遇目標を設定するのがおすすめです。
現在とのギャップをベースに計画を作成し、次のステップとしてより専門的な資格と合わせて接遇マナーを身に着け、キャリアアップを目指しましょう。
これからやりがいをもって積極的に働きたいという方にとっては、とてもいい機会になるでしょう。
例えば、「ご利用者様と目線を合わせることでコミュニケーションをとり、全員の顔と名前が一致するようにする」といったことが挙げられます。
全体の流れを観察する余裕も出ますので、自信もついてくるでしょう。
また、目標を決めた際に大事なのは期限を設けることで、数カ月に一度に定期的に見直すことがコツです。
4年以上の実務経験を経た場合
また、中堅~ベテランの職員に関しては介護福祉士やケアマネージャーなどの資格を取りつつ、リーダーとして人材育成や指導をする立場である管理職のキャリアパスを歩んでいる場合が多いです。
マネジメントの一環として施設全体の接遇目標を設定したり、従業員の個人目標の振り返り活用してチェックをすることもできるよでしょう。
その際、役割や能力に合わせたキャリアプランを考えるといった教育の視点も大事です。
勉強会や事業所の運営会議などで基準を設けて振り返りしたり、個人目標と連携する仕組みを作っておくことで、接遇マナーのレベルを維持し施設の雰囲気も良くなるといった効果も見られるでしょう。
接遇マナーはどんな職種・職務経歴を持った人でも重要なことですので、個人目標や人材育成にも活かすなど、簡単な導入から取り組むことから始めましょう。
まとめ
接遇マナーは介護の基本です。
人と人との関わりやコミュニケーション、信頼関係の構築が欠かせない介護の仕事では、介護職一人ひとりが接遇マナーを守ることが重要です。
介護職一人ひとりが基本的な接遇マナーを心がけることで、職場全体の雰囲気や印象が良くなり、働きやすく居心地の良い職場環境を実現するのに役立ちます。
まだ新人でどんな目標を立てたらいいか分からない、と思った時は上司の方と相談したりこれから定期的に評価してもらうと成長を感じることができるかもしれません。
ぜひ、日常のちょっとしたコミュニケーションを見直して、よりお客様の笑顔につながり安心できるような接遇とは何か考えてみましょう。
本記事の内容を参考に知識を取り入れてこれからの経験や実践に活かしていってください。
この記事の著者
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